日本の倉庫で数ヶ月保管していた電子製品の一部が充電できなくなるトラブルが発生しました。
この製品はリチウムイオン電池(3.7V品)を搭載していましたが、このリチウムイオン電池が倉庫保管中に過放電状態になり劣化してしまったため、充電できなくなったことが原因でした。
リチウムイオン電池のセルには「放電終止電圧(約2.7V)」という特性があり、この電圧より下がってしまうと、過放電状態となり、電池が劣化してしまいます。
通常はリチウムイオン電池のセルに小さな保護回路の基板が取り付けられており、これにより放電終止電圧より前に動作を強制停止させてしまいます。
2.7Vの放電終止電圧ギリギリで強制停止させるのは危険なので、一般的には放電が3.4V程度まで落ちると、保護回路が起動して強制停止するように設計されます。
強制停止後に長期間放置されて、自己放電が進んだ場合でも、2.7Vの放電終止電圧に到達しないようにするためです。
しかし、この製品は保護回路のソフトウェア設計に問題があり、電池の電圧が3.0V程度まで落ちないと強制停止しない設計仕様になっていました。
さらに、中国工場から出荷するときに一部製品が充電されない状態(3.0V)で出荷されてしまったため、日本の倉庫で保管している数ヶ月の間に、過放電状態(2.7V以下)になってしまいました。
対策として、保護回路のソフトウェアを修正し、電池の強制停止電圧を3.0Vから3.4Vまで上げて、さらに工場出荷時に全製品を70%程度(4.0V程度)まで充電した状態で出荷するように生産プロセスを見直すことで対応しました。
電池の保護回路の設計ミスは製品トラブルに即つながりますので、十分注意が必要です。
出荷済みの車載製品が北海道などの氷点下環境で起動しなくなるトラブルが発生しました。
一度動きだせば、その後は問題がないとのことで、製品起動時のプロセスになんらかの問題があることは明らかでした。
実際に不具合が発生した製品を氷点下まで温度を下げて分析したところ、電源変圧回路(DC-DCコンバーター)の出力側に接続されている電解コンデンサが原因であることがわかりました。
この電源回路の出力側には充電放電用のコンデンサが接続されており、それはポンプのように電気を貯めたり放出したりする役割をしています。
この電気を貯めこむ力は電解コンデンサの容量で決まります。
しかし、電解コンデンサの容量というのは低温時に小さくなる特性を持っています。
低温時に容量が小さくなるということは、電気を貯めたり放出したりする量が小さくなり、出力電流が減ってしまう(出力電圧が下がる)ということです。
つまり、このトラブルの原因は、低温でコンデンサ容量が小さくなり、十分な電流が出力できなくなってしまったため(結果的に出力電圧が下がった)、異常を検出した保護回路が動作してしまった(起動しない)ことでした。
対策として、コンデンサ容量をひとまわり大きいタイプに変更し、その周辺回路の調整で対応できました。
電解コンデンサに限らず、多くの電子部品は低温時に特性が変わってしますため、量産設計のつくりこみができていないと、このような不具合が容易に発生します。
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