
なんでもかんでも全数検査をすれば良いというわけではありません。全数検査のメリットとデメリットを理解することで、より経営効率の高い検品が可能になります。
以下に全数検査のメリットとデメリットを解説します。
■全数検査のメリット
全数を検査することで検査と同時に不良品をロットから弾き出すことが可能になります。
生産ラインの品質管理レベルが低いが、事情で他に委託する工場がないため仕方なく取引する場合など、実際にはよくあります。
市場クレームなどを工場側にフィードバックしても品質が一向に改善されず、さらに品質問題による経営損失が無視できないレベルにまで大きくなっている場合などは抜取り検査ではなく、いきなり全数検査をした方が効率が良い場合があります。
製造不良の市場流出を防ぐことができるので、返品率の低下と、アフターサポート費用を抑えることができ、結果的に経営効率の顧客満足度の向上につながることが期待できます。
■全数検査のデメリット
検査コストと時間が必要になります。商品単価が安いものの場合は検査コストが利益を圧迫する場合が多いため、商品単価が高いものなど、全数検査に見合った商品でないと現実的ではありません。また、抜き取り検査に比較して全数検査は時間がかかるため、納期に影響する場合もあり注意が必要です。
また、綺麗に梱包された商品を開けることで新しい不良品を作り出してしまう可能性が高くなります。結果的に「全数検査はしない方が良かった」と言う場合もありますので慎重な検討が必要になります。

全数検査と抜き取り検査を比較した場合の、抜取り検査のメリットとデメリットを解説します。
■抜取り検査の”メリット”
AQL抜取り検査であれば全数検査に比べて「低コスト」且つ「短時間」でロット全体の品質バラツキを統計学的に推測することができるのが最も大きいなメリットです。
単価が安く、ロット数量が多い商材の場合は全数検査をしていてはコストが合わないので、抜取り検査は非常に有効な手法となります。
どんな不良品が混入しているか予想できない場合などは抜き取り検査を行うことでロット全体でどのような不良品がどれくらい混入しているかを統計学的に推測することができます。
また、検査というのは綺麗に梱包された量産品をもう一度開けることになりますので「検査をすることで新たな不良品が発生するリスク」が必ず伴います。抜取り検査では必要以上に開梱しないのでこのようなリスクを最小限に抑えることが可能になります。
■抜取り検査の”デメリット”
抜取り検査はロット全体の不良品バラツキを「推測するための手法」なので、抜取り検査が終わったところで実際のロット全体の品質バラツキは変わりません。
当たり前ですが、抜取り検査では「特定の不良品をロットから弾き出すこと」はできません。
抜取り検査の結果を確認して、その後に改めて全数検査を行うことで初めて全体ロットから特定の不良品を弾き出すことが可能になりますので、二度手間感は否めません。
次回は全数検査のメリット/デメリットを解説します。

検品の方法には大きく分けて「抜取り検査」と「全数検査」の二種類があります。
それぞれの検査手法を解説します。
■抜取り検査
文字通りロット全体から一部を抜き取って検査を行います。
重要ポイントは「ロット全体の不良品バラツキを推測すること」であり、街頭アンケートなどで市場全体の意見を推測する行為に似ています。
当然ながら抜取り数量が少なすぎると統計学的に信頼性がないデータとなったり、一部の偏った場所だけで抜き取ったりするとデータとしての信頼性が落ちたりします。
これらの懸念点を考慮して導き出された手法が「AQL抜取り検査」と呼ばれ半世紀以上も製造現場で利用されています。
AQL抜取り検査の具体的な方法に関してはここでは解説しませんが、中国の製造現場で抜取り検査と言うとAQL抜取り検査を意味すると考えて良いでしょう。
■全数検査
文字通りロット全体のすべての個体を検査します。
手作業による工程や個体バラツキが出やすいポイントなどを重点的に検査する場合などには全数検査を行います。
なんでもかんでも全数検査を行なっていると時間もコストも無限に必要になってしまいますので「どのポイントを全数検査するか」の判断がとても重要になります。
次回は抜取り検査と全数検査のメリットとデメリットを解説します。