
中国人は日本人と比較して、組織力がとても弱いです。
この事実を知らないと、なにかとトラブルになるので、ぜひ理解しておいたほうがいいでしょう。
「組織力」というとわかりにくいかもしれませんが、中国人には「会社のため」「同僚のため」という考えがほとんどありません。
「忠誠心がない」「協調性がない」と表現するとわかりやすいかもしれません。
彼らにとって会社で働く目的は、自分のスキルアップのためであり、金を貯めるためであり、いつか独立して社長になるため、なのです。
少しでも条件の良い会社があればすぐに転職しますし、少しでも金儲けのチャンスがあれば飛びつきますし、少しでも可能性があれば自分で会社をおこします。
仕事に関しても、自分の仕事範囲は責任を持ってやりますが、他人の仕事は絶対に手伝いません。そもそも興味もないという感じです。
自分の仕事範囲さえやっていれば、プロジェクト全体が遅れようが、客が困っていようが、完全に知らん顔です。
トラブルが発生しても、自分に関係がないと思えば、なにもしません。
ある問題に対して、ハードウェア担当が「これはソフトウェアの問題だから自分には関係がない」と勝手に思い込めば、問題は分析されずにそのまま放置されます。
そして、ソフトウェア担当が「これはハードウェアの問題だから自分には関係がない」と同じく勝手に思い込めば、やはり問題は分析されずにそのまま放置されます。
優秀なプロジェクトマネージャーがいれば、それぞれの担当者に指示を出して問題解決ができるのですが、マネージャーの能力が低い場合などは、結果的に誰も問題を分析せずに放置するという状況が日常的に発生します。
日本の会社ではありえないようなことですが、中国の会社ではごく普通のことです。
日本からトラブル解析などを中国側に依頼しても、まともな返事がこないときは、だいたいこのような状態になっています。
こうなると、こちらから現場に突入しないとなかなか解決できないものです。

中国メーカーの驚異的な開発期間の短さは、深セン特有のサプライチェーンと中国人独特のビジネスセンスが関係しています。
日本の企業が1年以上かかるような製品を、彼らは三ヶ月程度で市場投入します。
これは徹底した分業体制を構築している深センだからこそ可能になる開発スパンです。
簡単に説明すると
1. 新しいコントロールチップが発表される 2. ソリューション会社が一ヶ月程度で基板開発(共用基板)を行う 3. 金型屋が一ヶ月半程度で基板形状に合わせた金型(共用金型)を起こす(2と同時進行) 4. 組立工場が一ヵ月半で部品を調達、組立てる
5. 販売会社が一気に市場投入
このスパンがおよそ三ヶ月。
驚異的な開発スピードです。
しかし、このようなスピード重視の製品開発を行っていれば、しっかりとした製品評価を行っている時間もありません。
結果的に信頼性や品質を軽視した製品がどんどん出来上がっていきます。
しかし、商売人の中国人はそれでも市場に投入します。そして、利益と同時に市場からのフィードバックを受取り、次の生産ロットに向けて改善していく、これが中国流です。

日本の大手電子系メーカーが衰退する一方で、ファーウェイやシャオミーなどの中国の電子系メーカーの躍進が目立ちます。
中国のエンジニアはほとんどが20代なので、当然ながら、経験では日本のベテランエンジニアには遠くおよびません。
それでは、中国メーカーの躍進の秘密はどこにあるのでしょうか?
この10年で、電子製品のモジュール化と集積化はさらに進み、多くの電子製品がコントロールICの仕様書通りに回路を作るだけでほぼ完成してしまうような時代になりました。
つまり、動作原理を深くまで理解していなくても、それなりの製品がつくれてしまう時代になったのです。
たとえば、複雑に思えるWindowsパソコンを設計しているソリューション会社のエンジニアも、実際はIntelチップの仕様を理解しないまま設計しているのが現実です。
そんな状況でも、圧倒的な人数とスピードを武器に新製品をどんどん市場に投入することで、躍進を続けているのが中国メーカーの実態です。
20代の中国人エンジニアは、チップの教科書通りに設計するのは可能でも、技術的なアレンジが入ったり、アナログ技術の要素が入ってくるとお手上げになる場合があります。
また、様々な知識を必要とする不具合分析などの業務も、経験の少ない中国人エンジニアは非常に苦手です。
新製品開発(ODM)などを委託するときは、委託先メーカーのエンジニアの技術力もしっかり見極めたいものです。